土地家屋調査士制度は「土地台帳」および「家屋台帳」の調査員制度の流れを継承して「表示に関する登記」へと時代の要請に従って役割が変化して現在の発達を遂げ、国民生活に不可欠な制度として定着しています。土地家屋調査士の意義は、不動産の状況を調査・測量して位置を明確にし、正確な地積(土地の面積)を確定した上で登記簿に反映するところにあります。
昭和24年のシャウプ勧告により税制の抜本改革があり、これによって国税であった固定資産税が市町村税に変わりました。そこで今まで税務署で管理してきた、「土地台帳」と「家屋台帳」を一元化する事により、課税のための台帳から現況を正しく表示するための台帳として取扱う事を目的に、税務署の管轄から法務局(登記所)の所管へと移されました。
これを機に台帳業務の適正を図る事、登記手続の円滑化、ならびに不動産による国民の権利を明確にする目的でこれらの業務を専門的に行うために昭和25年7月31日に「土地家屋調査士法」が制定されました。
私たち土地家屋調査士は、すでに70有余年の歴史を持つ国家資格者です。
土地の境界標とは、一筆の土地の境の屈曲点に設置された標識の事で、その土地の所有者が排他的に使用できる範囲を客観的に定めたものです。
境界標の種類
一般的に永続性のある境界標として使用されています。サイズは、設置場所等に状況に応じて使い分けされます。
花崗岩で出来た、いわゆる「石杭」と言われるものです。境界標としては最も優れた永続性を有する素材です。ただし、加工・設置等に手間がかかり若干高価になります。
加工が容易なため、色々な種類のものがあります。軽くて永続性に欠けるものではありますが、コンクリートや御影石を継いだものや、ステンレスで頭部を保護したものなどがあります。
真鍮・アルミ・ステンレス・鋳鉄など現地の状況にあわせた、色々な種類のものがあります。
色々なサイズがありますが、1~年位で腐食するので、耐久性にかけます。仮杭または、一時的な杭として使用されます。
境界杭の保護について
地盤の弱いところに境界標を設置しても境界杭が移動する場合があります。コンクリート杭などの底部にコンクリートで根巻きする事で、一層堅固な設置が可能となります。
土地家屋調査士は調査のために測量を行ないます。よく我々の事を「測量士さん」と言われる方がいらっしゃいます。
この土地家屋調査士と測量士との違いを端的に言いますと、土地の形状、特定の位置の高さ、河川や池などの深さ、道路の形状、土地の現況面積など、現地を正確に写し取る(測量する)仕事をされるのが、「測量士」という資格者の方々です。
しかし、土地家屋調査士は単なる土地の測量者ではありません。土地家屋調査士は不動産登記法、その他関係法令、時には民法に関する事項(物権、債権、相続等)や戸籍法、民事訴訟法など広範な法的知識を用いて土地の正しい「筆界」の探索、登記簿への反映、法務局の行う「筆界特定制度」への貢献(多数の筆界調査委員・測量実施員の輩出)、最近では裁判外紛争解決手続き(ADR)等の業務を行っています。
このように土地に関しての調査・測量をするという点では多くの共通点を持つ土地家屋調査士と測量士なのですが調査・測量の手法とその結果をどのように処理するかは全く異なります。
私たち土地家屋調査士の業務については、土地家屋調査士法に次のように定めがあります。
(土地家屋調査士の使命) 第1条
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の 専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上 に資することを使命とする。
(職責) 第2条
土地家屋調査士(以下「調査士」という。)は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
(業務) 第3条
調査士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
お隣さんとの境界に杭がなく、境界が分かりません。新たに境界標を入れるには、どうしたらいいでしょうか?
境界を明確にするために、「境界確定」を行なった上で、永続性のある境界標を設置しましょう。
所有地の境界(面積)を確認したいのですが、どうしたらいいでしょうか?
建物を建築する・土地を売却すると言った場合、「境界」がしっかりしていないと、トラブルの原因になります。「境界確定」を行った上で、永続性のある境界標を設置しましょう。
自宅の登記簿を調べたら地目が「田」となっていました。「宅地」にするにはどうしたらいいのでしょうか?
田や畑、山林などを造成して登記簿の地目を変更していない場合には、「地目変更」登記を申請します。
所有地を一つにまとめて売却したいのですが、どうしたらいいのでしょうか?
複数の土地を一つの土地とする「合筆」(ごうひつ)登記を申請します。
ただし、所有者が同じ、地目が同じなど合筆できる条件があります。
所有地の一部を売却したいのですが、どうしたらいいのでしょうか?
一つの土地を複数の土地に分割する「分筆」(ぶんぴつ)登記を申請します。
登記簿に書かれてある面積と、実際の面積が違っています。
法務局の「公図」と所有地の形が異なっています。どうしたらいいでしょうか?
登記簿に書かれてある面積(地積)と、実際の面積(境界確定後の)が異なる場合は、「地積更正登記」を申請します。
「公図」と実際の土地の形状が異なる場合には、土地の境界を確定した後に「地図訂正」の申出を行います。
建物を新築しました。どうしたらいいでしょうか?
建物を新築した場合には、「建物表題登記」を行ないます。
子供部屋を増築しました。どうしたらいいのでしょうか?
建物を増築したり、自宅を店舗などにした場合には、「建物表示変更登記」を行ないます。
建物を取り壊しました。どうしたらいいでしょうか?
建物を取り壊した場合には、「建物滅失登記」を行ないます。
土地の「境界確定」について
私たちがあなたの土地の境界(下図 1・2・3・4・5)確定を行な場合
私たち土地家屋調査士の仕事は、単に「登記申請」を行うのみではありません。あなたの大切な財産である不動産(土地・建物)を正確に調査し、正しく登記します。
また、測量技術の向上・基準点(街区基準点等含む)が整備され、我々土地家屋調査士は、世界測地系による測量(地球上のどこにあるかが分かる)に対応しています。我々土地家屋調査士が設置する境界標は、世界測地系の数値情報として後世に伝えられる位置情報を有しています。
このように我々土地家屋調査士が行う業務は、「後世に残る」仕事です。
あなたも、土地家屋調査士になりませんか?
免除資格とはなんですか?
土地家屋調査士筆記試験は、土地家屋調査士として業務を行うだけの法律知識等を有しているかを確認する「午前」の試験と、土地家屋調査士として最低限必要な測量学に関する知識を有しているかを確認する「午後」の試験に分かれています。
測量士補、測量士、1級建築士、2級建築士の資格を有する方は、「午後」の試験が免除になります。(「午前」の試験のみ受験する)免除資格を有しない人は、午前・午後の両方の試験を受験する必要があります。
多くの受験生の方は、この「免除資格」を得た上で、土地家屋調査士試験にチャレンジしているようです。
もちろん、「午前」・「午後」の試験を突破して土地家屋調査士になられる方もみえます。
「書式」試験とはなんですか?
土地家屋調査士の午前の試験は、5肢択一式問題20問と書式問題(土地・建物)2問からなります。
「書式」試験は、出題された条件に対して実際の登記申請書や図面(地積測量図・建物図面)を作成する試験です。
登記申請書や図面(地積測量図・建物図面)の様式は法律で定められており、その様式にそって作成する必要があります。(パターン化していますが、出題された条件にあった書式を正確に作成するためには、日々の練習が重要です)
実際の図面(地積測量図・建物図面)を手書きするそうですが…。
土地家屋調査士試験で出題される図面は、1/250または1/500の縮尺のものです。
多くの受験生の方は、調査士受験用三角定規(各受験専門校にお問い合わせ下さい)を使用し、シャープペンなどで下書きした上で、ボールペンで清書します。
建築士試験のように高度な図面作成技術を必要とはしませんが、「正確さ」(座標の位置・建物の形状など)は、採点の重要な要素になります。
土地家屋調査士試験では、合格ラインに何百・何千人とライバルがひしめき合います。合格を左右するのは、この「書式」試験の出来にかかっていると言っても過言ではありません。「丁寧」な仕上げを忘れないよう心がけて下さい。(下書き線は消すなど、チョッとした事など)
書式試験に必要な筆記具について教えて下さい。
シャープペンならば、製図用のもの、ボールペンならば、文房具屋で売られている100円~200円程度のもので、特に「これ」と言った特別なものはありません。自分が使用して一番使いやすいものでいいと思います。
合格に必要な学習時間はどれ位ですか?
受験専門校の対策講座などを受講する場合を想定します。
(各受験専門校の講座によって講義時間は異なります。講義時間等については、各受験専門校にお問い合わせ下さい)
① 択一試験対策として
講義時間+予習・復習時間 (およそ400~500時間位)
② 書式試験対策として
書式作成の練習を毎日2時間、半年間行なった場合、360時間程度になります。
これらを合計すると、択一試験・書式試験の勉強に500+360=860時間程度の試験勉強が必要になります。
(あくまでも一例です。講義時間等については、各受験専門校にお問い合わせ下さい)
独学での合格は可能ですか?
正直に言いますと、独学での合格はかなり困難が予想されます。しかし、独学で合格された方も多数見えます。
合格ラインについて教えてください。
土地家屋調査士試験の配点は、択一試験・書式試験がそれぞれ50点で、満点は100点です。
合格に必要な条件としては、択一試験、書式試験、両方に設定された足切り点(毎年変化します)を突破し、さらに合計点が合格点に達する必要があります。
口述試験とはどのような試験ですか?
「口述試験」とは、筆記試験を合格された方に課せられる最終試験です。試験官の2人と「面接形式」で行なわれます。課題については、試験室(名古屋の場合は、名古屋法務局の会議室)の黒板(ホワイトボードなど)に記載されており、その課題について不動産登記法による判断、土地家屋調査士としての判断などを口頭で答えていくものです。
筆記試験合格者は、ほとんど「口述試験」は合格しますが、過去には「再試験」があったそうです。